親知らずについて
皆さんは親知らずが気になったことはありますか?
当院では患者さまが来院される理由の中で、虫歯・歯周病と同じくらい親知らずが理由で来院される患者さまが多いです。痛みが原因の場合もあれば、親知らずは抜いたほうがよいですか?とご相談をいただくこともあります。親知らずに関して、今回はご説明させていただきます。
そもそも親知らずとは?
親知らずとは、専門用語でいうと「第3大臼歯」もしくは「智歯」とも言い、歯の一番奥に生える永久歯です。中切歯(最前方の前歯)から数えて8番目にあります。
親知らずは一般的に上下左右1本ずつの計4本ありますが、個人差により、もともと親知らずが無かったり、4本揃っていない場合もあります。
あるいは萌出方向(生える方向)が通常と異なる為、埋伏(歯ぐきや骨に埋まった状態)していたり、傾いて途中までしか生えてこない場合もあります。

生える際に歯肉に炎症が起きて腫れる事もあり、また、生えた後も一番奥に生えているため歯ブラシが届きにくく磨きにくいため、プラーク(歯垢)などが溜まってしまい虫歯になりやすくなります。親知らずのまわりの歯ぐきに炎症(智歯周囲炎)を引き起こすこともあり炎症が強い場合は抗菌薬や消炎鎮痛薬(痛み止め)の投与を行って様子を見て、炎症を繰り返すようなら、抜歯を行うことが適していると判断し、抜歯を行うこともあります。

親知らずは正常に生えていれば、比較的普通の歯を抜くのと同様に比較的簡単に抜歯を行うことが出来ますが、骨の中に埋まっていたり、歯の根の形が複雑だと、歯ぐきを切開したり、歯を支えている骨を削ったり、歯自体を分割して抜歯を行うこともあります。なお、親知らずの状態や患者様の健康状態(持病など)によっては、全身麻酔や静脈鎮静法による管理の上で抜歯を行う必要が出てくる場合もあります。
親知らずは抜いたほうが良い?
抜かない方が良い?
親知らずだから抜きましょう!
いえ、「親知らずだから必ず抜かなければならない」ということはありません。残しておいた方が良いこともあります。
抜いたほうが良いケース
1. 親知らず自体が虫歯になった
親知らずは一番奥に生えている歯なので、歯ブラシなどのオーラルケアもしにくく汚れが溜まり虫歯になりやすい箇所の一つでもあります。
清掃器具も届きにくく、治療したとしても上記に述べたように虫歯になりやすく、再び虫歯になるケースが見受けられます。となると、あえて治療はせずに抜いてしまった方がよい場合があります。
また、汚れが溜まりやすいため、その手前の歯も実は見えない部分が虫歯になってしまっていて、虫歯治療が必要になるケースもあります。

2. 横向きに埋まっているため、前方の歯に影響を及ぼしている
親知らずが横向きに埋まっている場合、智歯周囲炎や手前の歯の虫歯や根の吸収(溶かされるように浸食される)を引き起こすことがあります。あまりに虫歯や吸収が進むと、親知らずではなくその手前の歯自体が残せなくなり抜歯になってしまう場合があります。

3. 物がつまる、腫れや痛みを繰り返す
親知らずが中途半端に生えて、歯の頭の一部が見えているだけの場合は食べ物が詰まり汚れが溜まった状態になります。その状態のままだと周囲の歯ぐきは炎症を起こしやすい状態になっており、腫れや痛みを繰り返すことになります。

4. 骨の中に埋まっているが、レントゲン写真で袋のような影が見られる
レントゲンにうつった袋のような影は嚢胞と言われ、顎の中の神経を圧迫したり、膿の袋となって、痛みや腫れを生じさせることがあります。
抜かなくてよいケース
1. 親知らずが上下きちんと生えていて、噛み合っている
顎に直立に生えて、お互いに噛んでいる場合は抜かなくてもよいことが多いです。しっかりとブラッシングもできていれば問題も生じにくいと考えられます。
2. 骨の中に埋まっていて、問題がない
顎骨の中に完全に埋まっていて、周囲の歯や骨に悪い影響を与えることはないと判断され、痛みや減れがなければ、すぐに抜く必要はありません。
3. 入れ歯やブリッジ土台になる
ある程度まっすぐ生えている親知らずは、前方にある歯を失った場合でも、削ってブリッジの土台として使用したり、入れ歯のバネをかけることが出来るので、残しておいた方が良い場合もあります。
4. 親知らずの移植を行う
親知らずの手前にある臼歯を、抜かなければならなくなった時に、抜いた部分に親知らずを移植することが出来る場合もあります。
移植が可能かどうかに関しては、親知らずの形や大きさ、移植を予定している部位の状態など様々なことを考慮し慎重に判断する必要があります。
5. 矯正治療を行う
矯正治療により親知らずを生える方向が悪くても、きちんと噛めるように治すことが可能な場合があります。矯正治療は歯を動かす治療ではありますが、どのような状態でも可能というわけではないので、矯正治療で治せるかは専門医に相談することをおすすめします。
まとめ
歯を抜く場合、処置後には腫れや痛み、内出血、喉の痛みや発熱といった症状が生じたりすることがあります。少なからずリスクを伴います。
親知らずだから抜こうというだけではなく、まずは診査診断をしっかりと行い、担当医と十分に相談されてから処置を行うことをおすすめいたします。不安な点や疑問は、気兼ねなくご相談下さい。