歯を喪失した際の代表的な治療方法として、セラミック、インプラント、入れ歯があります。今回は、これらの治療方法のメリット・デメリットや治療の流れについて説明します。
セラミック治療のメリット・デメリットと治療の流れ
歯の一部を補う治療方法として、詰め物や被せ物があります。その材料には、金属、白いプラスチック、陶材などに使用されるセラミックなどが用いられます。この項目では、セラミックを使用した治療のメリット・デメリットについて説明します。
セラミック治療のメリット
●見た目が良い
セラミックの詰め物や被せ物は天然歯に近い色を表現できるため、見た目が非常に良いという特徴があります。
●長持ちする
セラミックは化学的に安定しているため、劣化しにくく、適切なブラッシングやメインテナンスにより約10年程度持ちます。
●虫歯になりにくい
セラミックは歯との適合性が良いことから、歯とセラミックの間に隙間が生じにくく、虫歯になりにくいという特徴があります。また、表面がツルツルしているため、プラークなどの汚れが付きにくくお口の中を清潔に保ちやすいという特徴もあります。
●変色しにくい
保健診療で使用される白いプラスチックのコンポレットレジンは、長期間使用すると劣化し、変色します。しかしセラミックは、長期間使用しても劣化しにくく、変色しにくいという特徴があります。
●材質によっては割れにくい
衝撃に弱い素材もありますが、人工ダイヤモンドとも呼ばれているジルコニアは、天然の歯よりも固く丈夫な素材です。奥歯など負担がかかりやすい箇所には丈夫な材質の選択をすることで割れにくく、長持ちさせることができます。
セラミック治療のデメリット
●費用が高い
セラミック治療は自費診療のため費用が高額になります。
●歯を削る量が多い
セラミック治療では、治療する歯の形態を整える必要があり、歯を削る量が多くなります。
●衝撃に弱い素材もある
セラミックは衝撃が加わると破折の原因になります。そのため、食いしばりや歯ぎしりなどがある人はセラミックが破損する可能性が高くなります。
特に奥歯など負担がかかる場所は強度の高いジルコニアを選択するなど、担当医とよく相談しましょう。
以上がセラミック治療のメリット・デメリットです。次にセラミック治療の流れについて説明します。
セラミック治療の流れ
①カウンセリング
セラミック治療のメリットやデメリットなどの説明を行います。また、お口の中を診察し、虫歯や歯周病、食いしばりなどの有無を確認します。
②歯の形態修正
治療する歯の形態を整えます。ブリッジ型のセラミックを装着する場合は、失った歯の両隣の歯の形態を整えます。
③型どり
歯の形態を整えた後は、歯の型を取ります。この時に作製するセラミックの色を決定します。
④仮歯の装着
セラミックの被せ物が完成するまで仮歯を装着します。
⑤セラミックの装着
噛み合わせなどを調節後、セラミックの歯を装着します。
インプラント治療のメリット・デメリットと治療の流れ
インプラント治療は、インプラント体と呼ばれる歯の根っこに相当する部分を顎の骨に直接埋め込むことで失った歯を補う治療方法です。
この項目では、まずインプラント治療のメリット・デメリットについて説明します。

インプラント治療のメリット
●健康な歯を削らない
セラミックのブリッジや入れ歯の場合、無くなった歯の隣の健康な歯を削ります。しかし、インプラント治療では、歯を装着する土台を顎に埋め込むので、健康な歯を削る必要がありません。
●見た目が良い
インプラントの人工歯は、天然の歯の色に近い素材が使用されています。そのため、見た目が良いという特徴があります。
●よく噛める
インプラントは顎の骨に直接埋め込まれるので物を噛んだ時の感覚が自分の歯でかんだ時の感覚と近いと言われています。
インプラント治療のデメリット
●費用が高い
インプラント治療は自費診療のため、費用の相場が30〜50万円と高額になります。
●治療期間が長い
インプラント治療の治療期間は、3ヶ月〜1年と言われています。これはインプラント体と顎の骨が結合するまでに時間がかかるためです。
●手術のリスクがある
インプラント治療では、顎の骨に穴を開け、インプラント体を埋入します。その際に、血管や神経を傷つけるリスクがあります。神経が傷ついた場合、麻痺や痺れが表れます。
以上がインプラント治療のメリット・デメリットです。次にインプラントの流れについて説明します。
インプラント治療の流れ
カウンセリング
インプラント治療を開始する前にカウンセリングを行います。ここでは治療についての説明が行われ、患者さまの希望や疑問について話し合います。
①検査
虫歯の有無、歯周病の検査、レントゲン撮影、頭部のCTスキャンなど行われます。骨の密度や虫歯の有無、神経や血管の走行などを確認します。
②術前処置
虫歯や歯周病の治療・クリーニングが必要な場合には優先的に治療し、その後インプラント治療に入ります。
④インプラント手術(1回目)
インプラント手術は2回に分けて行われます。1回目の手術では、インプラント体と呼ばれる歯の根に相当する部分を顎の骨に埋め込みます。手術内容としては、まず局所麻酔を行った後、歯ぐきを切開してインプラント体を顎の骨に埋入します。埋入後、歯ぐきを縫合し終了です。
③インプラント手術(2回目)
1回目の手術後インプラント体の定着を待つため、数ヶ月経過した後に2回目の手術を行います。2回目の手術では、インプラント体と人工歯をつなげるアバットメントと呼ばれる部品をインプラント体に取り付けます。手術内容としては、術後一度閉じた歯ぐきを切開し、インプラント体を露出させ、アバットメントを接続します。
⑥型どり
歯ぐきの傷が治った後に人工歯を作るための型どりを行います。その際に人工歯の色を決定します。
⑦人工歯の装着
人工歯の完成後、アバットメントに人工歯を取り付けインプラント治療は終了です。
⑧定期検診・メインテナンス
インプラント治療後のトラブルとしてインプラント周囲炎があります。インプラント周囲炎が重症化するとインプラントが取れてしまうことがあります。清掃不良によるインプラント周囲炎を予防するために3ヶ月ごとの定期検診とメインテナンスは、必ず受診しましょう。
インプラント症例
入れ歯のメリット・デメリットと治療の流れ
入れ歯には大きく分けて部分入れ歯と総入れ歯の2種類あります。部分入れ歯は、歯を部分的に失い、ご自身の歯が何本か残っている場合に使用し、総入れ歯は、ご自身の歯が一本も残ってない場合に使用する入れ歯です。
この項目ではまず、入れ歯のメリット・デメリットについて説明します。
入れ歯のメリット
●取り外しができる
インプラントやセラミックと異なり、入れ歯は自由に取り外しができます。そのため、入れ歯を取ってお口の中や入れ歯を清掃でき、入れ歯が壊れた場合には修理がしやすくなります。
●治療費が安い
保険適用の入れ歯があるため、治療費がインプラントやセラミックに比べて安価です。
入れ歯のデメリット
●見た目が悪い
部分入れ歯では、入れ歯を安定させるために金属の金具を取り付けます。この金具がお口を開けた時に見えるため見た目が悪くなります。
●噛みにくい
インプラントやセラミックに比べて安定性が劣るため噛みにくいという特徴があります。
●食後清掃する必要がある
入れ歯はプラスチックでできています。そのため食べ物が付着しやすく、入れ歯が汚れた状態で放置するとカビが生える原因になります。
以上が入れ歯のメリット・デメリットです。次に入れ歯治療の流れについて説明します。
入れ歯治療の流れ
前処置
患者さまと相談の上で入れ歯の形態を決定します。また、金属の金具がかかる歯の形態を整えます。
②型どり
前処置の終了後、型どりを行います。おおまかな歯の型どりと精密な型どりの2回に分けることがあります。
③かみ合わせの採取
②で採取した型を基に咬合床(こうごうしょう)と呼ばれる噛み合わせを取るための装置が作られます。この装置をお口の中に入れ、人工歯を並べるために必要なかみ合わせの位置を記録します。
④入れ歯の試適
人工歯を仮に並べたものを試適します。かみ合わせがずれている場合は、再度かみ合わせの採取を行います。
⑤入れ歯の完成
完成した入れ歯を装着し、かみ合わせや適合の確認を行います。
まとめ
今回は、失った歯を補う代表的な治療方法であるセラミック、インプラント、入れ歯について説明しました。
今回紹介した3つの治療には様々なメリットやデメリットがあります。これらの治療の特徴を踏まえた上で、ご自身に合った治療を選択しましょう。
