乳歯の生え変わりについて
乳歯は、全部で20本あり2歳ごろには全て生え揃います。乳歯の生え変わりは、6歳ごろから始まります。 今回は、乳歯の生え変わり時期や生え変わりの際に起きやすいトラブルやその解決方法について説明します。 小児歯科 乳歯と永久歯の違い まずは、乳歯と永久歯の違いについて説明します。 色と大きさ 乳歯は白く、永久歯はやや黄色味を帯びています。大きさは歯の種類にもよりますが、一般的に永久歯の方が大きい傾向にあります。 本数 乳歯の本数は全部で20本あります。一方で、永久歯は親知らずを含めて32本あります。 呼び方の違い 乳歯はアルファベットで、永久歯は番号で呼びます。乳歯は、前から乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯の5種類あり、それぞれをA.B.C.D.Eと呼びます。 一方で永久歯は、前から中切歯、側切歯、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯(親知らず)の8種類あり、それぞれを1番、2番、3番…と番号で呼びます。 歯質の厚さ 歯は、外側からエナメル質、象牙質、歯の神経である歯髄(しずい)から構成されます。乳歯は、永久歯に比べてエナメル質、象牙質が薄いという特徴があります。 一方で、歯髄は乳歯の方が大きいという特徴があります。 虫歯のなりやすさ 乳歯は永久歯と比べ、エナメル質や象牙質が薄いので虫歯になりやすい傾向にあります。 また、子供の場合、間食や磨き残しも多いためこれらのことも虫歯になりやすい原因になります。 乳歯について 乳歯が生えてから抜けるまで 次に乳歯が生えてから抜けるまでの過程について説明します。 乳歯ができるまで 妊娠から出産 乳歯の元となる歯胚(しはい)の形成は、赤ちゃんがお腹の中にいる頃に始まります。 胎生7〜10週にかけて形成された歯胚は、カルシウムなどの栄養成分を吸収しながら、石灰化し乳歯の形が作られます。 歯胚が形成される段階でうまく作られなかったり、歯胚同士が結合したりすると、乳歯の本数が足りなくなることがあります。 この現象を乳歯の先天欠如といいます。この先天欠如は、約100人に1人という割合で起こるといわれています。 乳歯が生え終わる2歳半以降になっても、乳歯が生えてこない場合は、一度歯科医院を受診し、検査を受けましょう。 乳歯が生え揃うまで 出産後6〜9ヶ月 乳歯は下の前歯である乳中切歯が生えてきます。乳歯が生えてくる時期には、個人差があるため前後することがあります。 出生後10ヶ月〜1歳ごろ この頃には、上の乳中切歯と上下の乳側切歯が生えてきます。乳歯が生えてくる順番が異なることがありますが、個人差があるので問題はありません。 1歳半ごろ 最初の奥歯である第一乳臼歯が生えてきます。この時点で、生えている乳歯の本数は全部で12本になります。 2歳〜2歳半ごろ 乳側切歯と第一乳臼歯の間の前歯である乳犬歯が生えてきます。その後、最後の乳歯である第二乳臼歯が生え、すべての乳歯が生え揃います。 乳歯が生え変わるまで 次に乳歯の生え変わりの時期について説明します。一般的に乳歯は、6歳以降から段々と生え変わります。 6歳ごろ まず、下の乳中切歯が抜け下の前歯である中切歯が生えてきます。また、第二乳臼歯の後方から第一大臼歯が生えてきます。第一大臼歯は6歳に生えるので別名“6歳臼歯”とも呼ばれます。 7歳ごろ 上の乳中切歯と下の乳側切歯が抜け、中切歯と側切歯が生えてきます。生え変わりの途中で上の前歯がすきっ歯に見えることがありますが、生え終わる頃には自然と治ります。 8歳〜9歳ごろ 8歳ごろになると上の乳側切歯が抜け、側切歯が生えてきます。9歳ごろには、上下の乳犬歯が抜け、犬歯が生えてきます。犬歯は、糸切り歯とも呼ばれます。 10歳〜11歳ごろ 第一乳臼歯、第二乳臼歯が抜け、第一小臼歯と第二小臼歯が生えてきます。 12歳ごろ 第一大臼歯の後方から第二大臼歯が生えてきます。第二大臼歯は、12歳に生えてくることが多いので別名“12歳臼歯”とも呼ばれます。また、親知らず(第三大臼歯)は、18歳以降に生えてきます。 乳歯の生え変わり時期について説明しました。生え変わる順番や年齢は個人差があり、順番や年齢が前後することがあります。 乳歯が生え変わらない原因と対応 乳歯の生え変わる年齢になると乳歯がグラグラし始めて、最終的には乳歯が抜けます。 しかし、場合によっては、乳歯が自然に抜けないこともあります。 この項目では、乳歯が抜けない原因とその対応について説明します。 後続の永久歯が欠如している 乳歯の生え変わりの時期になると後続の永久歯が乳歯の下から生えてきます。この時、乳歯の根っこが圧迫され歯根が短くなります。この現象のことを歯根吸収(しこんきゅうしゅう)と呼びます。 歯根吸収により乳歯がグラグラし始めて抜けます。後続の永久歯がないと永久歯による根っこの圧迫がなく歯根吸収が起きないため、乳歯が自然と抜けません。 永久歯の欠損が疑われる場合は、永久歯の状態を確認するためにレントゲン撮影を行います。永久歯の元となる歯胚(しはい)が確認されない場合は、永久歯の欠損と診断します。 欠損している永久歯を補う方法としては、ブリッジ治療や成人以降であればインプラント治療を行います。 永久歯の生え方が悪い 通常であれば永久歯は、乳歯の下から生えてきます。しかし、永久歯が生えるスペースが少なかったり、乳歯の根の先に膿が溜まっていたりすると永久歯が乳歯の横から生えてくることがあります。この場合、乳歯の歯根が正しく吸収されずに乳歯が残ることがあります。 この状態では乳歯が自然と抜けることはほとんどありません。そのため、歯科医院で乳歯の抜歯を行います。 過剰歯がある 永久歯は合計で32本ありますが、まれに余分な歯が生えることがあります。この余分な歯のことを過剰歯(かじょうし)と呼びます。過剰歯があると永久歯が歯ぐきの中に埋まったままになり、乳歯が抜けない原因になります。 過剰歯の存在が疑われる場合は、レントゲン撮影を行い過剰歯の有無や位置を確認します。その後、過剰歯が三次元的にどの部位にあるのかを確認するためにCT撮影を行います。その後、過剰歯の抜歯を行います。過剰歯の生え方や位置により、抜歯の方法が少し異なります。 過剰歯が生えている場合,/h3> 過剰歯が生えている場合は、通常の抜歯を行います。 過剰歯が歯ぐきの中に埋まっている場合 この場合は、歯ぐきを切開し必要であれば骨を少し削り抜歯を行います。過剰歯が生えている場合と比べて、治療時間が長くなります。 そのため、不安感が強く長時間の治療が難しい子供に関しては、全身麻酔下で抜歯を行うこともあります。過剰歯が難しい位置に生えている場合も全身麻酔下で抜歯を行います。 乳歯がグラグラしてきた時に歯科医院を受診した方が良いケース 乳歯の生え変わりの年齢になると乳歯がグラグラしてきます。通常であれば、グラグラし始めた乳歯は自然と抜けます。 しかし、場合によっては、歯科医院で乳歯の状態を確認した方が良い場合もあります。次に詳しく説明します。 大きな虫歯がある 虫歯が大きいと歯の根っこの先に膿が溜まります。これにより歯を支える骨が溶け、乳歯がグラグラすることがあります。 この場合は、生え変わりに伴うものではなく、虫歯による乳歯のグラグラです。歯の根っこの膿を放置すると、永久歯の形や色が変化したり、正しい位置に生えなかったりすることがあります。 これらのトラブルを防止するために、虫歯と歯の根っこを治療します。虫歯が大きく乳歯を残すことが難しいと判断した場合は、乳歯の抜歯を行います。 子供の虫歯特徴 顔面の外傷 転倒などにより顔を強打すると、乳歯が折れ、グラグラする原因になります。 この場合の対応は、ますはレントゲン撮影を行い、折れた部分の確認を行います。乳歯のグラグラが軽度の場合は、経過観察を行います。乳歯が大きく動いている場合は、両隣の乳歯と固定し様子を診ます。 永久歯が正しい位置に生えていない 何らかの原因で永久歯が乳歯の下からでなく横から生えてくることがあります。この状態を放置すると、歯並びが悪くなる原因になります。 この場合は、乳歯がグラグラしていなくても乳歯の抜歯を行い、正しい位置に永久歯が生えてくるようにスペースを設けます。 小児矯正でお子さまに笑顔と健康を! 永久歯が下から生えているのに乳歯がグラグラしていない場合 永久歯が乳歯の下から生えているのにも関わらず、乳歯がグラグラし始めないことがあります。 これは、乳歯の歯根吸収がうまくいっていない可能性があります。この状態では、自然に乳歯が抜ける可能性は低いので、乳歯の抜歯を行います。 痛みがある場合 グラグラしている乳歯に痛みが出ることがあります。この痛みが原因で食事に支障がある場合は、歯科医院を受診し、必要であれば抜歯をしてもらいましょう。 まとめ 今回は、乳歯の生え変わりについて解説しました。 乳歯は、全部で20本存在し、6ヶ月ごろから生え始め、2歳半くらいで生え揃います。乳歯の生え変わりは、6歳ごろから始まり、12歳ごろまでには永久歯への生え変わりが終わります。 乳歯が生え変わる時期には、個人差がありますが、過剰歯や永久歯の生え方が悪いと乳歯がグラグラしてこないことがあります。この場合は、歯科医院で検査を受けましょう。 また、逆に乳歯が生え変わる時期ではないのに乳歯がグラグラしてくる場合もあります。この原因としては、虫歯や外傷などが挙げられます。 乳歯は永久歯と比べてエナメル質や象牙質が薄く虫歯になるリスクが高くなります。乳歯の虫歯は、後続の永久歯の生え方などに影響を及ぼすことがあります。 日頃からのブラッシングや仕上げ磨きを行い、虫歯を予防しましょう。また、定期的に歯科医院に通院し、乳歯の生え変わり時期に起こるトラブルを防止しましょう。